和尚のひとりごと「正座について」

今回は正座の歴史について書いていきたいと思います。生活様式の変化からなかなか正座をする機会が無くなってきた今日、法事の時など慣れない正座で足が痺れて法事の事などそっちのけという方も少なくないのではないでしょうか?
 
 正座は日本に古くからある一般的な座り方であると思われている方も多いと思いますが、意外にその歴史は新しく正式な座法となったのは近世になってからであり、千利休が「茶道」を完成させ正座を基本として定めてから後の事だと言われています。
 
 それ以前にも正座と言う座法は一応あったものの、神道での神や、仏教での仏像を拝んだりする時の座法でした。そのため一般にはあまり普及しておらず、日常では胡坐(あぐら)や立ち膝で座るのが一般的でした。同様に近世期の武士においても正座は『膝を屈する』最大の屈辱と考えられていて、主君や親の前でも正座はしなかったと言われています。
 
 正座が広まったのは江戸時代の参勤交代のときに将軍の前では大名達は正座をするように取り決められ、それから各地に広まったという説や、近世期に畳が普及し始めたというのも大きな要因であると思われます。しかしながら畳は高価なものであり正座が庶民に広まったのは江戸末期位からだと言われています。
 
 正座が一般に広まりだして約400年。仏教伝来はもっと以前になりますから、意外にその歴史は浅いのかもしれませんね。