和尚のひとりごとNo184「廃仏毀釈」

去る2月7日に、『寺院消滅』の著者としても知られる鵜飼 秀徳上人のお話を聴いて参りました。大阪市内で開催された研修会でのことです。 『寺院消滅』は、今後25年のあいだに現在日本にある約7万7千の寺院のうち、およそ3割から4割、つまり2万から3万にもおよぶ寺院が消滅するという予測を統計的データのもとに示した衝撃的な書でした。様々なメディアにも取り上げられ、特に私たち僧侶にとりましては、改めて襟を正さなければならないと実感させる本でした。

 

今回は「廃仏毀釈150年目の寺院消滅」という演題でしたが、廃仏毀釈とはかつて明治政府により進められた神仏分離政策に乗じて、寺院が学校などの公共施設に変わったり、制度あるいは思想的な面での仏教側への不満から、文化財としての仏像や伽藍が破壊された一連の事象を指します。その廃仏毀釈の際に、かつて江戸末期には9万箇寺あったと言われる日本全国の仏教寺院が、4万5千あまりにも減ってしまったそうです。ただ意外だったのは、その後再び寺院は増加傾向に変わり、ピーク時には7万7千にもその数を伸ばします。これは廃寺になった寺の復興であったり、新たに開教の為に建てられた寺院であったりその内実は一様ではないでしょう。しかしながら人々の願いが寺院復興につながった事は紛れもない事実であったと思います。 ご先祖様があったからこそ、今の私たちがあることを実感できる場所、またあたかも浄土の如く荘厳された本堂にて、仏さまに手を合わせることで心の安らぎを得る。近世までの仏教寺院は地域の人々が集まる憩いの場であり、救いを求める場でもありました。 果たして現代の仏教寺院がその役割を果たせているのか?かつての日本は仏教国として世界でも有数の伽藍を擁し、その数は現在でもなお全国のコンビニエンスストアを合わせた数、また学校や幼稚園などの教育施設を合わせた数を上回っているそうです。 今回の研修会を通じて、改めて一仏教僧侶として、皆様に仏様のご縁をしっかりとつないでいける様に精進しなければならない事を実感致しました。