和尚のひとりごとNo308「盂蘭盆」
今回はお盆供養が最初に説かれた『仏説盂蘭盆経』に説かれている目連尊者のお話しをご紹介します。以前にも盂蘭盆(うらぼん)の語源についてサンスクリット語(古代より続くインドの聖典語)の「ウラバンナ」に基づくと記しましたが、その意味については諸説ありました。一つは「倒懸(逆さづり)」あるいは「ウルヴァン(霊魂)」また最近では「オーダナ(ご飯)」を乗せる盆のことであるとも説明されます。
「ウラバンナ」を逆さづりとすると、これは非常な苦しみを表現していると言えます。
『仏説盂蘭盆経』は、有名な仏弟子の目連尊者の母親が餓鬼の境遇で苦しんでいたのを救済する物語であり、別の経典では母親は地獄に堕ちてしまっていたとも言われています。
十大弟子の中でもとりたて神通力に優れていた目連尊者は、ある日、亡き母親の現在の境遇を知りたいと考え、その居場所を天眼(てんげん、優れた眼力)で探したところ、餓鬼界で飢えと渇きが癒されない苦しみを味わっているのを見つけました。目連尊者はその空腹を満たすため、食物を差し出そうとしますが、母親が食べようとするその瞬間にご飯は炭と化して食べることができません。
師である釈尊に相談するとこのように仰りました。
まずは目連尊者に、
七月十五日「僧自恣」(そうじし)の日に衆僧(修行僧たち)にご飯や食べ物、香油、燭台、敷物、寝具などを供えるように。
そして修行僧たちには、
施主の家のためを願い、七世の祖先の幸せを祈り、坐禅をして心を定めてから食するように。
これら十方の衆僧の力があり、目連尊者の母は救われたと記されています。
今でも夏のこの時期にお盆供養が行われるのは、このお話に基づいているのです。