和尚のひとりごと「祝聖文(しゅくしょうもん)」
皆さま、令和三年元旦、新年明けましておめでとうございます。
今回は、私たち浄土宗の寺院で、一年間の安泰を願ってお正月に勤められる法要である「修正会」(しゅしょうえ)にて唱えられる「祝聖文(しゅくしょうもん)」についてご紹介いたします。
「天下和順(てんげわじゅん) 日月清明(にちがっしょうみょう) 風雨以時(ふうういじ) 災厲不起(さいれいふき) 国豊民安(こくぶみんなん) 兵戈無用(ひょうがむゆう) 崇徳興仁(しゅうとくこうにん) 務修礼譲(むしゅらいじょう)」
『無量寿経』下「五悪段」より
その意味するところは次の通りです。
「天下は泰平となり、太陽も月も清らかに輝き、時節良く雨が降り風が吹き、災害や疫病も起こらない。国は豊かに栄え、民の暮らしは安らかとなり、武力を行使することもない。〔人々は〕他人の善いところを尊び、互いに思いやりながら、つとめて礼儀正しく振る舞い、また譲りあうのである。」
(『現代語訳 浄土三部経』より)
仏まします世界においては、世は安泰であり、天候も程よく、疫病・災害も起きない。人々は互いを尊重し、思いやりの心で接し、礼を失することもない。このような世の中の実現を願って唱えられる偈文であります。
ご存じのように、昨年は新型コロナウイルスの影響が、世界中のさまざまな境遇の人々の生活に及びました。そして人類の歴史上、私たちは常に自然界の危険にさらされ、様々な疫病の恐怖を克服して参りました。ここで改めてコロナ禍の一日も早い終息を願ってやみません。
さて今を去る事約60年ほど前、法然上人の750年大遠忌を迎えた昭和36年のこと、浄土宗の元祖法然上人に7番目の大師号が加諡宣下(かしせんげ)されました。それを「和順大師(わじゅんだいし)」といいます。これは当時の昭和天皇がこの「祝聖文」を典拠として贈ったものであり、我が国がまだ経済成長を遂げる前、戦争の記憶も冷めやらぬ中、皆が心より平和と人間らしい安穏たる暮らしを望んでいた中でのことでありました。そして浄土宗は平成15年には宗祖法然上人のご命日である毎月25日を「世界平和念仏の日」と定め、さらに5年後の平成20年には「浄土宗平和アピール」を宣言いたしました。
改めて皆さまの平穏なる暮らしの実現、ならびに一切の有情が安らかなる心にてお過ごし頂ける世の中とならんことを、玉圓寺一同、心より祈念致します。