和尚のひとりごと「伝道掲示板376」
ここに長い旅路を続ける人がいる。
彼の目前に河が現れ、道が阻まれたとしよう。
河の此岸は危険極まりない道であり、彼岸は安全に思える。
彼は筏によって向こう岸に無事渡り終えることができた。
そこで彼はこのように思案した。
「この筏のおかげで私は安全なこちら岸に渡り着くことができた。
この大層、役に立った筏を
これからも担ぎ持って行こう」と。
果たしてこの者は、筏に対して
為すべき行為を為しているであろうか?
目的が果たされたならば、もはやその筏は置いていくべきものであろう。
教えも同様である。
いかに勝れた教えであろうとも、所期の目的が果たされたならば執着せずに捨ておくべきものとなる。
ましてや悪しき教えについてはなおさらである。