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和尚のひとりごとNo921「咲いて誇らず」
春になり野山に花々が咲き始めて参りました。冬の間は土にしっかり根を張り巡らせて、春になると花を咲かせるのです。綺麗に咲き出した桜の花も冬の間は地中に根を張り、花を咲かせる準備をしていたのです。桜は開花時がピークだと思うのは私達の勝手な見方です。誰の目も惹かない時期であっても一所懸命に生きているのです。
4月8日は仏教を開かれたお釈迦様の誕生日です。およそ2500年前、現在のネパール領であるルンビニーという所で誕生されました。お釈迦様は、「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」と仰られました。「この世界において私ほど尊い存在はない。」と宣言されたのです。決してお釈迦様一人だけが尊いという、傲り(おごり)高ぶった意味ではありません。私達一人一人、誰もが唯一無二の存在であり、生きる意味のある尊い存在で、誰にも惑わされる事はないという事です。
極楽浄土に咲く蓮の花は、「青色青光(しょうしきしょうこう)・黄色黄光(おうしきおうこう)・赤色赤光(しゃくしきしゃっこう)・白色白光(びゃくしきびゃっこう)」と『阿弥陀経』というお経に描かれています。「青色の蓮の花は青色に輝き、黄色の蓮の花は黄色に輝き、赤色の蓮の花は赤色に輝き、白色の蓮の花は白色に輝く。」と説かれているのです。それぞれの花がそれぞれの色で誇らしく咲き輝いているのです。私達もそれぞれの立場で一人一人輝く存在であります。しかし、他の人と比べると妬み(ねたみ)や嫉み(そねみ)という人を羨む(うらやむ)心が起こり、争いごとの種となってしまいます。他人と比較する心から解放されないと、本来の輝きを取り戻す事は出来ません。そもそも私達は一人で生きていく事は出来ないのです。決して自分一人の力だけで花咲かせ、輝いているのではありません。ご先祖様から戴いた命を頂戴し、沢山の人々の助けと御恩を戴いて今、生かされているのです。
花は枝によって支えられ
枝は幹によって支えられ
幹は根によって支えられている
土にかくれる根は見えない
外からは何も見えない
咲いた花見て喜ぶならば
咲かせた根元の恩を知れ ( 浄土宗尼僧 小林良正 良正庵 庵主 )
今、生きているのは目には見えない人々の支えがあってこそです。咲かせてくれた根元があるのです。輝きは根元があってこそ輝くのであり、周りの人々が輝かせてくれるのです。胸張って咲き誇る存在であっても、誇り威張っていては輝いているとは言えません。お互い助け合い、共に輝かせあって参りましょう。