和尚のひとりごとNo169「地蔵菩薩」
インドの言葉でKṣitigarbha(クシティガルバ)と言います。この言葉を訳せば「大地の子宮」、つまり母親の胎内が新たな生命を生み出すように、新しいものを生み出す豊かな可能性を秘めている存在という意味です。また、大地のように広大な慈悲心を持つ菩薩であるとも言われます。
地蔵菩薩は仏教を開かれたお釈迦さまが亡くなったあと、遠い未来に世に現われる弥勒菩薩が出世するまでの期間、つまり仏さまが不在であり世が徐々に乱れていく世界に現われて、六道に苦しむ衆生に教えを説き、進むべき道を指し示す菩薩さまです。末法とも呼ばれるこの乱れゆく世界とは、実は私たちが住む娑婆世界のことを差します。仏さまに教えを頂きたくとも、すでに釈迦仏はこの世にはおらず、苦しみから抜け出し心の平安を得るにはどうすればよいか、常に迷っている私たちの味方となってくれるのが地蔵菩薩です。
浄土の御教えでは阿弥陀如来が誓われたお念仏の力で、苦しみのない西方極楽浄土に往生できることを説きます。極楽には阿弥陀さまがいらっしゃって、今この瞬間も法を説いて下さっている。しかしながら私たちには簡単にはまみえることは出来ません。そこで、この娑婆世界のみならず六道と言われる苦しみ多い境涯に自ら赴いて導いて下さるのが地蔵菩薩だいう訳です。
ところで私たちにとって地蔵菩薩といえば、やはり路傍の六地蔵さまが思い出されます。皆さまご存知のように子供の守り仏として広く信仰を集め、関西地方では毎年秋口に地蔵盆が行われます。そういう意味でも一番身近な菩薩さまが地蔵菩薩だと言えるかもしれませんね。
合掌