偈文
和尚のひとりごと「伝道掲示板301」
〔原文〕
一、計功多少量彼来処
二、忖己徳行全欠多減
三、防心顕過不過三毒
四、正事良薬取済形苦
五、為成道業世報非意
”一つには、目前の食がここに至るまでにかかった労力をねぎらい、感謝の心を持つこと
二つには、己自身がこの食を受けるに値する徳を備えているか、反省すること
三つには、この食に対しての執着は三毒の煩悩に発するものであると肝に銘ずること
四つには、この食は身を養う良薬の如きものであり、また肉体の苦境を救うものであることを思うこと
五つには、この食は仏道を成満せんが為のものであり、世の栄誉とは関わらないものであると考えること”
食作法で唱えらる、各宗で広く用いられている偈。
出典は道宣『四分律行事鈔』。
律の大家道宣がこの五観の偈を考案し、食作法に取り入れたという。
合掌
和尚のひとりごと「伝道掲示板277」
善導『般舟讃』より
(書き下し文)
釈迦如来の真の報土は、清浄にして荘厳の無勝是れなり。
娑婆を度せんがために、化を分って入り
八相成仏して衆生を度す
増上寺を中心とした東国の縁山流声明において唱えられるもので、この偈は初重に該当する。続く二重・三重とともに、まず前段の四念仏が唱えられ、それに後段の偈が続く形式をとる。「称讃偈」と称されるように誦経後の称讃として用いられることが多い。
”八相”とは教主釈迦牟尼仏の生涯を彩った大切な出来事で、弥勒の兜率天からの「下天(げてん)」、母摩耶夫人の胎内に宿った「託胎 (たくたい) 」、母故郷への道すがら、その右脇から誕生した「降誕 (ごうたん) 」、人生の苦悩を解決せんがために城を出た「出家 (しゅっけ)」、覚りに対する悪魔による障害を退けた「降魔 (ごうま)」、そして菩提樹下での正覚(さとり)である「成道 (じょうどう)」、鹿野園において五比丘になされた最初の説法である「転法輪 (てんぼうりん) 」、クシナガラ沙羅双樹のもとで入滅された「入涅槃 (にゅうねはん) 」の八つを指している。
合掌