偈文
和尚のひとりごと「伝道掲示板246」
(書き下し文)
門々不同にして八万四なるは、無明と果と業因とを減ぜんがためなり
利剣はすなはちこれ弥陀の号なり、一声称念すれば罪みな除こる
(意味)
法門が各々異なり実に八万四千にもおよぶのは
衆生の無明(おろかさ)と業の結果とその原因とを除き滅せんが為である
切れ味鋭い剣とは、これ阿弥陀如来の名号に他ならない
ひとたび称すれば、罪障すべて除かれるからである
新亡の霊に対する回向文(精霊回向文)、また「利剣名号の文」とも呼び百万遍念仏を修する際に摂益文の代わりにこの偈を称える。
枕経・通夜・迎接式・荼毘式・収骨式など、在家の葬儀式の際の回向文として用いられている。
善導大師『般舟讃』より。
合掌
和尚のひとりごと「伝道掲示板243」
(書き下し文)
みづから信じ人を教へて信ぜしむること、難(かた)きがなかに転(うた)たまた難し
大悲を伝えてあまねく化するは、まことに仏恩(ぶっとん)を報ずるに成る
(意味)
自ら信じ、かつ他をして信じさせること
これは困難ある中にもまた輪をかけて難しいことである
仏の大いなる慈悲の心を、あまねく全ての人々に伝えることは
誠に仏の大恩に報いることに他ならない
また念仏者の心構えを端的に示した文。
列祖の回向に唱える偈文として用いられることから、御忌会など列祖の法要、また説教・法話・講演会など教えを伝える場面において、最初に「開経偈」を唱え、終わりにこの偈文を称える慣わしである。
善導大師『往生礼讃』初夜礼讃偈より。
合掌
和尚のひとりごと「伝道掲示板239」
(意味)
この味わいと色味、香りを、ここに招いた御仏に供養致します。
そしてこの度、この食を施した者に、はかり知れないほどの功徳が届きますように。
仏前もしくは霊前にて御膳を供える際に唱えるもので、”波羅蜜(パーラミター)”は菩薩が実践すべき六つの徳目に含まれるは布施波羅蜜のこと。見返りを求めず惜しげなく施すことを意味する。
本来は浄土宗の食作法(正式な食前の作法)において唱えるべき偈文に「呪願偈(じゅがんげ)」があり、これはそこから転用されたもの。
「此食色香味しじきしきこうみ 上献十方仏じょうこんじっぽうぶつ 中奉諸賢聖ちゅうぶしょげんじょう 下及六道品げぎゅうろくどうほん 等施無差別とうせむしゃべつ 随感皆飽満ずいかんかいほうまん 令諸りょうしょ(今こん)施主得せしゅとく 無量波羅蜜むりょうはらみつ」『新学行要鈔』
これによればこの食によって諸仏から六道輪廻の有情を含む全てに施さんと志すが、ここでは今この道場に奉請した仏に対する供養という形をとっている。
また特定の施主がいるときは”令今施主得”、特定の施主が決まっていないときは”令今諸施主得”とする。
合掌