和尚のひとりごとNo576「法然上人御法語後編第十一」

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廻向発願心(えこうほつがんじん)
【原文】
 廻向発願心(えこうほつがんじん)というは、過去および今生(こんじょう)の、身口意業(しんくいごう)に修する所の、一切の善根(ぜんごん)を、真実の心をもて極楽に廻向して、往生を欣求(ごんぐ)するなり。これを廻向発願心と名づく。この三心を具しぬれば、必ず往生するなり。
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廻向発願心(えこうほつがんじん、又はえこうほつがんしん)
三心のひとつ。
自分自身が過去世より今までに為してきた全ての善き行い(善根)と、他者が為してきた善き行いを褒め称える心の全てを、三心の他の二心である「至誠心(誠の心)と「深信」(深く信ずる心)とに回向して往生を願うこと。
『観経疏』に説示された善導大師による廻向発願心のこの解釈を、法然上人はそのまま受け継がれた。
回向(廻向、パリナーマ)とは方向を転じて差し向けるが原意。
行い(業、カルマ)には必ず相応の報いがあり(因果応報)、自ら為した行いの報いは自身が受け取る事(自業自得)が原則である。たとえば善き行いは安楽をもたらし、反対に悪しき行いは苦悩をもたらす(善因楽果、悪因苦果)。しかしながら善き行いについては、その功徳を他者に振り向けたり、特定の目的の為に役立てることが出来ると考える。これが回向となる。

今生(こんじょう)
三世(三際、さんざい)の一つで、現世のこと。「世」は時間を意味し今現に生きている時間を今生と呼ぶ。

欣求(ごんぐ)
悦び願い求めること。



廻向発願心(えこうほつがんじん)というのは、過去世ならびに現在世において、身・口・意の三業によって為してきた全ての善き行いを、誠の心をもって極楽(浄土への往生)に向けて振り向けて、往生を心より願い求めることであります。これこそを廻向発願心と名づけます。(以上述べてきた)これらの三心を具えれば、必ず往生する事がきるのです。


生きる上で為してきた、そしてこれからも為していくであろうさまざまな行い、中でも善き行い(善根)を念仏往生の為に振り向けることができる。それら全てを、極楽往生に向けた意義深い業とすることができる、そのように拝受致したいと思います。