和尚のひとりごとNo1030「袈裟2」
前回「袈裟1」に引き続き袈裟のご紹介をいたします。
袈裟にも色の規定がある事を皆さまはご存じでしょうか?
古来から袈裟は、五正色(赤・白・青・黄・黒)と五間色(紅・碧・緑・騮黄(りゅうおう)・紫)のような美しい色を避るべきとされていました。では袈裟には具体的にはどのような色が許されたのでしょうか?
伝承により諸説ありますが、壊色(如法色、不正色 ふしょうじき)と呼ばれる青や黒、木蘭色が許容されていたようです。
「木蘭色」とは、木の木蘭の実で染めたわずかに赤みのさす灰黄だそうですが、染めていく際に含まれる鉄分の作用により、黄褐色(明るい黄に近い褐色)ともなり赤褐色(赤みがかった褐色)ともなります。ここで思い出してみてください。
現在日本の僧侶が身につけている袈裟にも様々な色味がありますが、基本は褐色であるとされています。
また南方仏教の僧侶が身にまとう袈裟として、明るい黄褐色の袈裟をつけるタイの僧侶や赤褐色の袈裟をまとうミャンマーやチベットの僧侶の姿を思い浮かぶかも知れません。
和尚のひとりごとNo1024「袈裟1」
昔から僧侶と袈裟(けさ)は切っても切れない関係にあると考えられてきたように、そもそもは出家した僧侶は俗服を捨て袈裟のみを身につけるべきとされていました。袈裟(けさ)とはインドのサンスクリット語であるkaṣāya(カシャーヤ)を音写(おんしゃ)した言葉です。これは赤褐色を意味すると言われていますが、これがまた壊色(えじき)や染衣(せんね)と訳されたり、糞掃衣(ふんぞうえ)と呼ばれたりするのは、一般の人がかえりみない布の小片を綴り合わせて染色したものが袈裟として用いられた為です。具体的には墓所などに打ち捨てられた(一般の人々にとりすでに不要となり金銭的価値がなくなった)衣服などを集め、縫い合わせて染め直したものを仏教僧は身につけていたという事になります。
この事が意味しているのは、仏道修行にとって最も肝要な欲望を抑えなくしていく事、つまり無所有(むしょう)(所有を出来る限り避ける事)を徹底させる為であったと考えられています。
十大弟子 頭陀行(ずだぎょう)第一と讃えられた摩訶迦葉尊者(まかかしょうそんじゃ)は、お釈迦さまより、身につけていた袈裟を送られて一生涯大切にしたと言われ、その仏直伝の袈裟はインドを旅した玄奘三蔵も拝観されたといわれています。