和尚のひとりごと「伝道掲示板316」
かつてネーランジャラー河畔にて修行に励んでいた釈尊に悪魔(夜叉、やしゃ)が語りかけた。
云わく、
あなたが死なないで生きられる見込みは、千に一つの割合だ。
きみよ、生きよ。生きたほうがよい。
命があってこそ諸々(もろもろ)の善い行いをする事ができるのだ。
釈尊がそれに答えて云わく、
悪(あ)しき者よ。汝は(世間の)善業を求めてここに来たのだろうが、
わたしはその(世間の)善業を求める必要性は微塵も感じていない。
悪魔は善業の功徳を求める人々にこそ、そのように語るがよい。
汝の第一の軍隊は欲望であり、第二の軍隊は嫌悪(好き嫌い)であり、
第三の軍隊は飢餓であり、第四の軍隊は妄執(とらわれの心)である。
第五の軍隊はものうさ(やる気のなさ)、睡眠であり、第六の軍隊は恐怖といわれる。
第七の軍隊は疑惑であり、第八の軍隊はみせかけと強情と、
利得と名声と尊敬と名誉と、また自己をほめたたえて他人を軽蔑することである。
これらこそが汝の軍勢である
釈尊の言わんとする事は、世間的な価値の全てが斥けるべき悪魔の軍勢であるという事だろうか。
釈尊は悪魔の声には耳を貸さずに、自ら信ずるところに従って努め励み正覚を得るに至った。
合掌