伝道掲示板
和尚のひとりごと「伝道掲示板322」
初転法輪(しょてんぽうりん)において説かれた教えは中道の教えであり
四諦八正道(したいはっしょうどう)であったと伝えられる。
四諦(四つ聖なる真理)とは。苦諦(くたい)、集諦(じったい)、滅諦(めったい)、道諦(どうたい)の四つの真理である。
生きることは本質的には苦悩であり、その苦悩には煩悩という原因があり、
その煩悩を滅する事で苦悩が滅し、そのための道が八つの実践の道である事。
この教えを聴いたのち、かつて苦行をともにした5人のうちの一人、
コンダンニャ(憍陳如、きょうちんにょ)に法眼が開いたという。
法を見る眼、すなわち世の実相を理解する智慧が生じたコンダンニャは釈迦の最初の弟子となった。
現在に至るまで仏教の四大聖地に数えられる鹿野園(サールナート)での出来事である。
合掌
和尚のひとりごと「伝道掲示板319」
出家が守るべき戒律に最も精通していた事から「持律第一(じりつだいいち)」と
称せられた優波離(ウパーリ)に仰った言葉。
優波離は釈迦族の理髪師であり、当時のインドの身分制度(ヴァルナ)では
最下層のシュードラ(奴隷)の出身であったという。
優波離が出家を申し出たとき、釈尊はその出自に拘らずそれを許し、
また数ある志願者の中で、まず最初に彼を出家させたと伝えられる。
優波離はある時、阿蘭若(あらんにゃ、人里離れた山林や荒野)の行をしたいと師に申し出たが、
釈尊はたとえをもってこのように諭した。
”大きな象にとって楽し気な池での水浴も、
小さな人間にとっては恐ろしい体験となることもある。
そのようにそれぞれの身の丈にあった行を行うべきである。
そなたは衆中にて(ひとりではなく仲間とともに)修行を続けるように。”
合掌
和尚のひとりごと「伝道掲示板316」
かつてネーランジャラー河畔にて修行に励んでいた釈尊に悪魔(夜叉、やしゃ)が語りかけた。
云わく、
あなたが死なないで生きられる見込みは、千に一つの割合だ。
きみよ、生きよ。生きたほうがよい。
命があってこそ諸々(もろもろ)の善い行いをする事ができるのだ。
釈尊がそれに答えて云わく、
悪(あ)しき者よ。汝は(世間の)善業を求めてここに来たのだろうが、
わたしはその(世間の)善業を求める必要性は微塵も感じていない。
悪魔は善業の功徳を求める人々にこそ、そのように語るがよい。
汝の第一の軍隊は欲望であり、第二の軍隊は嫌悪(好き嫌い)であり、
第三の軍隊は飢餓であり、第四の軍隊は妄執(とらわれの心)である。
第五の軍隊はものうさ(やる気のなさ)、睡眠であり、第六の軍隊は恐怖といわれる。
第七の軍隊は疑惑であり、第八の軍隊はみせかけと強情と、
利得と名声と尊敬と名誉と、また自己をほめたたえて他人を軽蔑することである。
これらこそが汝の軍勢である
釈尊の言わんとする事は、世間的な価値の全てが斥けるべき悪魔の軍勢であるという事だろうか。
釈尊は悪魔の声には耳を貸さずに、自ら信ずるところに従って努め励み正覚を得るに至った。
合掌