伝道掲示板
和尚のひとりごと「伝道掲示板139」
早島鏡正師『ゴータマ・ブッダ』より
入滅を予感したブッダは頭北面西右脇(ずほくめんさいうきょう)の姿で横たわったが
背後に悲しみ咽ぶ従者アーナンダの声をきく。
悲しみを諫め四半世紀にわたり道行をともにした弟子にかけた言葉。
「およそ、生じ、存在し、作られ、破壊されるべきものであるのに、それが破壊しないようにということが、どうしてありえよう…」
いつの世でも時を共にした者の死は悲しい。
果てしない長大なる時間の流れに比べれば、それがほんのつかの間のあいだでのことであったとしても。
そしてブッダは臨終に際し、再び諸行無常の理を説き
残された者が自らの修行の完成の為に、怠ることなく励むように諭した。
ロリヤン・タンガイ(現在のパキスタン)出土の仏涅槃浮彫
和尚のひとりごと「伝道掲示板137」
“菩薩正念(しょうねん)を以て世間を觀(み)るに
一切(すべて)皆(みな)業縁(ごうえん)より得たり
一切法(すべてのもの)を觀察(み)るに悉く因縁より起る
生なきが故に滅なし”
因縁所生であることは実体として存続し得ないことを意味する
実体として存在しないのであれば
それが滅することも生ずることも成立し得ないであろう..
60巻本『華厳経』を訳出した仏陀跋陀羅は天竺(てんじく)禅師とも称された。
同学の僧伽達多(サンガダッタ)とともに罽賓(カシミール)に至った際に中国僧の智厳に請われ東行を決意したという。
現在のインド、ジャンムー・カシミールにある仏教僧院に描かれた仏たち
和尚のひとりごと「伝道掲示板136」
“佛言はく、一切の法の自性は本来寂静にして、自性涅槃なり、
涅槃の故に自性は認むべからず、故に自性なしと説きぬ
諸法は衆生が相ありと執計せるが故に有り
然れどもこれ假の名にして實は無きなり
次に諸法は因縁によりて成りたるものなれば假に有るものにして實はなきなり
次に諸法の本性は見るべからず、聞くべからず生もなく滅もなきなり”
諸法を成り立たせる原因と条件があって初めて名としての体を持つ。
従って自性は存在しない。
そして我々衆生が見かけの世界に相貌ありと計らうが故に有る。
従って実体なき仮のものである。
『解深密経』は仏の深密の教えが解明された経であり
唯識の深義(じんぎ)が闡明されている。